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2016年1月10日 (日)

やる気は脳ではなく体や環境から生まれる(池谷裕二)1~内発的に生まれる意欲などない~

ベネッセ教育研究センターの情報誌「BERD」から、大脳生理学者・池谷裕二へのインタビュー記事『やる気は脳ではなく体や環境から生まれる──「環境に存在する意欲」の捉え方──リンク』より抜粋
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内発的に生まれる意欲などない

 「意欲とは何か」とよく聞かれますが、意欲を脳の中に探しても見つからない、これが脳研究から見た私の結論です。「やる気を出せ」といわれて出せるものではない。

 では、勉強や仕事に対してやる気がわくとか、意欲的になるというとき、脳では何が起こっているのか。答えははっきりしています。大脳基底核の一部である「淡蒼球(たんそうきゅう)」から送り出された信号によって、モチベーションが高い状態になる。重要なのは、淡蒼球を活動させるのが脳そのものではなく体だということ。

・・・中略

最近は「脳トレ」がブームのせいか、皆さん脳を他人事のように自分から切り離して見ている気がします。少しは、脳の立場になって考えてみてほしい。脳の立場なんて、妙に思われるでしょうが、想像してみてください。脳はひとりぼっちですよね? 固い頭蓋骨に覆われ、外の世界とつながっていないのだから。脳が環境のことを知る唯一の手掛かりは、体です。五官や手足の動きなど、体を通じてしか、今の状況を知る術がないのです。

・・・中略

意欲とかやる気についても同様で、脳よりも、体や環境の側の条件を考えないと、論じても意味がありません。脳より体が大切なんて、脳科学者の発言としてどうかと思いますが。

 朝起きるのが苦手な人がいますけれども、しっかり目が覚めるまで待って、それから起き上がるというのはあり得ない。実際には体を動かすから脳も覚醒してくるのです。だからどんなに眠くても、とにかく布団から出る。新聞を取りに行ったり洗面所で顔を洗ったりして、それでようやく頭が冴えてくる。論文を書くのも同じです。書き始める前は面倒に思っても、始めて5分か10分もすると気分が乗ってくる。ああいう状況のときに、淡蒼球が盛んに活動していると思ってください。

 合格したい大学の下見をするのも、これと似たところがあります。教室とか講堂に入って、自分がそこで授業を受けている様子を想像してみると、よし、やってやろうという気分になる。こういう風に、目的の場所に体ごと持っていくのは、脳への刺激という観点からも大切な経験です。その点では、メールやインターネットのバーチャルな世界だけに浸るのは、脳の成長の点で若干の問題があるといえるでしょう。
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(つづく)

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